当社は、スイス型自動旋盤(注1)の新製品としてSLシリーズの「SL-7」および「SL-10」を開発しました。情報通信機器、自動車、医療分野等の小径部品加工を主要ターゲットとして、2021年10月から販売を開始します。
当社では、小径部品加工用モデルとして「SR-10J type C」をラインアップしていますが、小径部品の複雑形状化や多様化する加工ニーズに応えるためにさらに複合加工能力を強化した、材料径φ7mmまでの「SL-7」と材料径φ10mmまでの「SL-10」の2モデルを新たにラインアップに追加しました。
正面加工用のクシ刃型刃物台は、旋削加工用のバイトホルダーと複合加工用のクロスドリルユニットを縦に配列する構成を採用。クロスドリルユニットには加工部品の形状に応じて工具ユニットの取り替えが可能な4箇所のカートリッジポジションを有した5軸型ユニットを搭載し、小径部品加工に最適なコンパクトな本体サイズでありながら、多彩なツーリングレイアウトによる加工を実現しています。
また、背面加工用に搭載した2軸×3段のY2軸制御付き6軸型ユニットは、最大4箇所まで回転工具ユニットを装着することが可能。背面側での複合加工能力を拡充することで、効率的な工程分割によるサイクルタイム短縮を実現しています。
段取り替えやメンテナンス時の切削室の作業スペースを確保するため、大開口の跳ね上げ式ドアを採用。また、機械操作時の視認性を向上させるため、オペレーター側に角度をつけたNC画面を配置した操作パネルなど、機械各所にオペレーターの操作性、作業性に配慮した構造を採用しています。
さらにソフト面でも、パラメーターやプログラムを復元可能な自動バックアップ機能や、プログラムと一緒に工具ユニットや形状オフセットなどのデータを管理可能なプログラムデータ一括入出力画面など、段取り時の作業を支援する各種便利機能の充実を図りました。
SLシリーズの特長
高機能・高生産性
- 正面加工用のクシ刃型刃物台に、カートリッジ式クロスドリルユニット5軸型を搭載。4箇所のカートリッジポジションに各種の工具ユニットを装着することで、多彩な加工バリエーションを実現。
- 背面加工用刃物台に、2軸×3段のY2軸制御付き6軸型ユニットを搭載し、最大4箇所への回転工具ユニットの装着が可能。効率的な工程分割による正面/背面オーバーラップ加工でサイクルタイムの短縮を実現。
- 切屑分断に効果を発揮するステップサイクル機能を標準搭載。
- 各種モーターの高出力化により、ワンランク上の加工能力と小径部品加工に最適な高回転を実現。
高精度
- クロス回転工具モーターへの冷却ファン取り付けや、キャクに直接切削油が掛からない板金カバーの追加など、過度な発熱を抑制する構造を採用。
- 機体各部に温度センサーを配置し、高精度かつ柔軟な熱変位補正を実現。
- ビルトインスピンドルを採用したメイン主軸に加え、サブ主軸にもビルトインセンサーを搭載し、高精度な主軸割り出しを実現。
操作性・作業性
- 段取り替えやメンテナンス時に十分な作業スペースを確保するため、切削室側に跳ね上げ式ドアを採用。
- 機械操作時の視認性を確保するため、10.4インチのディスプレイを採用。また操作パネルをオペレーター側に向け角度をつけて配置することで操作性を向上。
- すべての系統で同一番号のプログラムを一括管理可能な「多系統プログラム管理画面」や、装着する工具ユニットの形状や寸法を確認しながら機番登録が可能な「工具ユニット機番入力画面」など、オペレーターの作業を支援する各種便利機能を搭載。
(注1)スイス型自動旋盤とは
スイス型自動旋盤は、時計部品を加工する機械として、1870年代にスイスにおいて考案されました。別名“主軸移動型自動旋盤”とも呼ばれ、直径に比べて部品長が長い部品を高精度に切削できる点が大きな特徴とされています。
一般的には、細長い部品を汎用旋盤で加工を行うと、加工物がたわみを起こして正しい寸法に仕上げることができません。
スイス型自動旋盤では、材料の振れ止め装置の働きをするガイドブッシュを用い、刃物はガイドブッシュから一定距離の位置で、外径方向の切り込み運動のみを与えるため、加工物はたわみを起こさずに、高精度に切削することができます。また、軸方向の運動は刃物台が移動するかわりに、主軸台が材料をくわえた状態で移動する機械構成となります。
問い合わせ先
機械事業部 営業部長 加藤 稔(かとう みのる)
電話番号 0537-36-5586