当社は、近年注目の高まるエネルギーハーベスティング(※1)の技術を利用した小型振動発電ユニットを開発しました。
新たに開発した製品は、当社が小型音響部品事業にて長年培ってきた小型化技術、音響関連技術を活かしたコイルとマグネットによる電磁誘導型の小型発電ユニットで、微弱な振動から電気エネルギーを引き出します。振動発電には電磁誘導型の他に圧電型、静電誘導型の製品が存在しますが、電磁誘導型はこれらの方式と比較して、特に人の歩行などの振動での発電効率が高いことを特徴としております。
従来、機械や構造物の振動、歩行やランニング時の人体の動きの振動はエネルギーとして活用されることがありませんでしたが、当社の開発した小型発電ユニットは、これらの振動をエネルギーに変換し、無線センサーネットワーク(※2)の電源や、自発光LEDの電源などに活用することができます。また、電力を自ら作り出すため、電池交換の必要がなく、密封性、防水性、防塵性を備えた製品を実現できます。
振動発電において多くの発電量を得るためには、振動体の周波数に合わせて製品を作り込む必要があります。当社では、小型音響部品の開発時に培ったコンピューターシミュレーションを活用し、発電機構の最適化を図っております。今回開発した3モデルは、EH12が人が歩く際の振動、EH13はモーターなどの機械振動、EH15が人が走る際の振動に合わせて設計された製品です。
今後はさらなる発電能力の向上、ひとつのモデルで様々な振動を利用して大きな発電量を得るための改良を進めるとともに、マーケティング活動に着手して量産化を目指した開発を進めていきます。
(※1)エネルギーハーベスティングとは、環境中で捨てられている微小なエネルギーを電力に変換する技術です。光・熱(温度差)・振動・電波など環境中に存在する様々なエネルギーを電力に変換し、充電や電池交換なしで長期間のエネルギー供給が可能な電源を実現できます。ネットワークに「誰でも、いつでも、どこでも、何でも」つながるユビキタスネットワーク社会を実現するための必須技術として注目を集めています。
(※2)近年、インターネット等の情報インフラストラクチャーが社会に浸透したことから、ありとあらゆるものをネットワークに接続して相互通信を可能とするMachine to Machine(M2M)やInternet of Things(IoT)の仕組みが注目を集めています。M2MやIoTを実現させるためには機器の状態を検知するセンサーノード(センサーを搭載した無線通信端末)への電源供給が必要ですが、電源供給のためのケーブル配線や電池交換のメンテナンス性など多くの課題が残っています。エネルギーハーベスティングの技術は、自ら発電することが可能なため、電源供給が不要となり、M2MやIoTの仕組みを利用した無線センサ―ネットワークの実現に重要な役割を果たすことが期待されています。
R&Dセンター 技術管理部 戦略企画室長 石野 勝也
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