気候変動への対応
TCFDへの取り組み
スター精密グループは2022年2月に『「企業と社員が共に成長し、社会に貢献する」という基本的な考えのもと、その実践を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します』をサステナビリティ基本方針と定め、事業活動においては経済的側面だけではなく、社会的、環境的側面の重要性を認識し経営に取り組んでおります。また、当社グループは世界各国、地域で事業展開するグローバル企業として、気候変動などの社会課題への対応を重要な経営課題と認識しており、ステークホルダーの皆様からの期待や要請にグループ全体としてお応えしていくため、環境に関する重点課題(マテリアリティ)として、「CO2排出削減による気候変動への対応」「環境配慮型製品の創出」を特定し、取り組みを進めております。
こうした中、当社グループは、2023年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しています。気候変動が事業に与える影響とそれによるリスクと機会をシナリオに基づいて分析し、事業戦略へ反映していく取り組みを推進しています。
ガバナンス
当社グループでは、気候変動に関わる重要事項を決定する機関としてサステナビリティ委員会を設置しています。同委員会は代表取締役社長が委員長を務め、常勤取締役および執行役員を委員として構成されており、気候変動を含むサステナビリティに関するマテリアリティを特定するとともに、その課題解決に向けた達成目標を設定し、グループ全体での取り組みを推進しています。同委員会における決定事項は、サステナビリティ委員会の下部組織である環境部会を通じて、その対応方針等が各事業部、グループ会社へ展開されます。
また各事業部、グループ会社における活動結果は、環境部会を通じてサステナビリティ委員会に定期的に報告されることで、その実行性を高めています。
これらの一連の活動実績および進捗状況については、定期的にサステナビリティ委員会から取締役会に報告し、取締役会の監督を受ける体制としています。
(環境マネジメント体制)
(環境マネジメント体制における会議体)
会議体 | 主な役割 | 構成 | 頻度 | 2023年実績 |
---|---|---|---|---|
取締役会 |
|
取締役全員 | 原則毎月1回 | 11回 |
サステナビリティ 委員会 |
|
委員長:代表取締役社長 委員 :常勤取締役、執行役員 |
半年に一度 (臨時開催あり) |
3回 |
環境部会 |
|
各事業部において選出されたメンバー | 半年に一度 (臨時開催あり) |
3回 |
リスク管理委員会 |
|
委員長:代表取締役社長 委員 :常勤取締役、執行役員 |
半年に一度 (臨時開催あり) |
2回 |
リスク管理
気候変動リスクはサステナビリティ委員会が評価および管理を行っています。また、必要に応じてリスク管理委員会へ情報共有を行います。
気候変動リスクはサステナビリティ委員会において特定され、環境部会において当該リスクの影響評価と対応策の検討がなされて、各事業部、グループ会社に展開されます。
サステナビリティ委員会での検討結果は、取締役会に定期的に報告され、取締役会はサステナビリティ委員会の取り組みに対し諮問・監督を行います。
戦略
当社グループでは、気候変動がもたらすリスクと機会、その影響度を把握し、適切に戦略立案に反映させるために中長期的なリスクと機会を想定するためのシナリオ分析を行っています。
シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表するシナリオ※を参照し、パリ協定の目標である「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」の実現に向けて、1.5℃シナリオ、および、現在のペースで温室効果ガスが排出されることを想定した4℃シナリオの2つのシナリオを用いて分析し、事業への影響の重要性を評価しています。
※主な参照シナリオ
・1.5℃シナリオ:IEA NZE、IPCC 1-1.9
・4℃シナリオ:IPCC SSP5-8.5
(特定したリスクと機会)
区分 | 項目 | 財務影響度 | 対応策 | ||
---|---|---|---|---|---|
1.5℃ | 4℃ | ||||
移行リスク | 炭素税の導入 | 炭素税導入により物価が高騰、直接費や間接費が増えコストが増加 | 大 | 小 |
|
GHG排出規制の強化 | 環境規制対応による各種コスト(設備投資、研究開発費等)が増加 | 大 | 小 |
|
|
エネルギーミックスの変化 | 化石エネルギーの割合が減少することでエネルギーコストが増加 | 中 | 小 |
|
|
顧客の評判 | 気象変動に伴う顧客ニーズの変化や製品需要の減少による売上高の減少 | 中 | 小 |
|
|
投資家の評判 | 環境課題への取り組みに対する情報開示等によるコスト増加 | 中 | 小 |
|
|
物理的リスク | 平均気温の上昇 | 気温上昇に伴う設備管理費、光熱費等のコストの増加 | 小 | 中 |
|
異常気象の激甚化 | 洪水や豪雨により生産工場、サプライヤーが被災し、操業停止による売上高の減少および復旧コストの増加 | 中 | 大 |
|
|
機会 | 製品・サービス | 規制対応製品を市場投入し、需要拡大により売上高が増加 | 大 | 小 |
|
EV化による新たな部品加工ニーズが発生。最適な加工機を販売し売上高が増加 | 大 | 小 |
|
||
資源の効率性 | 省エネルギー設備への切り替えや作業効率化により製造コストが減少 | 中 | 小 |
|
|
異常気象の激甚化 | 空調設備の需要増加、関連パーツの生産工場から工作機械の受注が増え売上高が増加 | 小 | 中 |
|
|
サービス体制を強化、迅速なアフターサービスで顧客からの評判が高まり売上高が増加 | 中 | 大 |
|
指標と目標
- 指標
- スター精密グループでは、気候関連リスクと機会を管理するために温室効果ガス排出量を指標としています。
- 目標
- 当社グループでは、Scope1,2について、「2030年度に2013年度比46%削減」「2050年度に実質ゼロ」の目標を設定し、1.5℃シナリオの実現に向けて温室効果ガス排出量の削減を推進しています。
その一環として、2013年度以降、生産性向上を目的としてグローバルで生産拠点の選択と集中を進め、温室効果ガス排出量の削減を実現しています。
今後は国内生産拠点のリニューアルを予定しており、省エネ設備導入やDX推進によりさらなる生産効率の向上を目指しつつ、再生可能エネルギーの導入も含め、削減目標の達成に向けた取り組みを強化していきます。 - 実績
- Scope1,2の温室効果ガス排出量の実績は、以下の通りです。
*対象はScope1,2、範囲は単体および主要連結子会社を含みます。
*2023年に算定ルールの見直し等を行い、過去実績値を含めて再計算したため、公表値が変更となっています。
国内工場におけるCO2フリー化への取り組み
- 再生可能エネルギーの導入
- 当社の工作機械事業の国内生産拠点である菊川工場およびスターメタル(子会社)では、脱炭素社会への取り組みに向けて、電気をCO2フリーである再生可能エネルギーに切り替えました。
この2拠点は、スター精密グループ国内全体のCO2排出量の約70%(2023年実績値)を占めているため、大幅な削減効果が期待できます。 - エネルギー使用量の削減への取り組み
- CO2フリー電気導入後も、私たちは事業活動に伴うエネルギー使用量の削減に努めていきます。
- 菊川南工場の環境配慮設計
- 2025年11月に竣工を予定している菊川南工場(仮称)では、省エネルギー性能の指標である「建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)」で、ZEB※1ならびに CASBEE評価認証※2における最高位 S ランクの両認証を取得しました。
地球環境に配慮した工場として、エネルギー使用効率を高める設計としたほか、高断熱性能を持つ外皮(外壁・屋根・窓)、高効率空調機器、地中熱を利用するアースチューブ設備※3などを採用します。加えて、屋根面には太陽光発電パネル約800kW を設置。高水準の省エネ、創エネを実現するための設計・設備を取り入れ、一次エネルギー消費量を削減する計画です。 - 国内外のCO2フリー化への取り組み
- 国内工場におけるCO2フリー化の推進に加え、今後は海外工場でもCO2フリー化を目指して取り組んでいきます。私たちは、グローバルな視点で環境負荷の低減に努めます。
※1 「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称で、建築物が消費する年間の一次エネルギーを収支ゼロとすることを目指し、その性能を建築物省エネルギー性能表示制度である BELS 認定制度にて、指定機関が認証を行う。建物用途ごと従来の建物で必要となるエネルギー量の基準を定めており、その基準からの削減率に応じて大きく4段階に分類されるが、「ZEB」はその最上位ランクとなる。
※2 「建築環境総合性能評価システム」として、国土交通省、一般社団法人住宅・建築 SDGs推進センターが開発した、建築物の環境性能や品質を総合的に評価するシステム。建築物の環境品質・性能、環境負荷低減性等の評価項目をもとに、環境性能効率を算出。指定機関が S からCまでの5段階で評価を行い、認証する制度。
※3 地中に埋設した管を通して外気を室内に送り込む設備。地中は年間を通じて温度が安定しており、地中を通る際に冬の冷たい空気や夏の暑い空気を地中の温度に近づけることで、冷暖房の負荷を軽減する。
菊川南工場(仮称)イメージ図